こどもの「心」を育てる2 思いやりの心


第2回のテーマは「人を思いやる心」です。

幼児には少しハードルの高いテーマかもしれません
が、幼児期からその意識を育てていくことはとても
大切です。

では、親としてどのように考えていけばいいのでし
ょうか。

SNSの影響も大きいと思いますが、学校では
「いじめ」の問題があとを絶たないようです。

そして、最近では低年齢化して、幼い子たちの間
でも「いじめ」があると聞きます。

そうした状況にあって、わが子がいじめられない
ようにと願うとともに、誰かをいじめる側に回ら
ないよう「思いやりのある子」に育ってほしいと
いうのが、親心でしょう。

しかし、ただ「お友だちに対して思いやりの心を
持ちましょう」と言うだけでは、子どもの心に響
きません。

「人を思いやる」というのはどういうことなのか、
とくに幼いときはわからないからです。

前回の「強い心」でもお話ししたように、子ども
たちは自らの経験を通して、さまざまな力を身に
つけていくものなのです。

【富士登山での思いがけない収穫】
バディスポーツ幼児園では、サマーキャンプ
や富士登山などの野外活動を行なっています。

たとえば、富士登山。7合目まで、誰も脱落する
ことなくみんなで登るのが目標です。7合目まで
登るなんて、大人だって大変。

当然ながら、途中で座り込んでしまう子も出て
きます。

すると、元気な子が歩き疲れた子の荷物をもっ
てあげたり、お互いに声をかけて励まし合うん
です。

1つの目標に向かってみんなで力を合わせてが
んばる中で、自然と体力のある子は、ない子を
かばい助ける。また、助けてもらった子は、
仲間のやさしさが身にしみて、人を思いやるこ
とのすばらしさを実感する。

もともと「日本一の山にみんなで登ってみよう」
と挑戦と達成を経験するという目的で始めた
富士登山が、まさか子どもたちの思いやりの心
をも育てることになるとは考えていなかったので、
私としてはとてもうれしい収穫でした。

また、こんなこともあるかもしれません。自分
のことだけを考えて好き勝手に振る舞ってきた結
果、気がついたら誰も自分のことを思いやってく
れなくなり、一緒に遊んでくれる友だちがすっかり
減ってしまった……。

そうした「痛い経験”をして初めて、人を思いやる
ことの大切さを知る子もいるでしょう。

【人との関わりで学ぶ「思いやりの心」】
では、家庭の中では、人を思いやる心が芽生える
きっかけとして、どんなシチュエーションが考え
られるでしょうか。

きょうだいゲンカを例にとってみましょう。

きょうだいゲンカでは、強い子(兄や姉)が、が
まんすること=弱い子(弟や妹)へのやさしさ、思
いやりだとされがちです。

たとえば、お兄ちゃんがおもちゃで楽しそうに遊
んでいると、弟が「僕もやりたい、貸して!」
と言い出すことは、よくあることです。当然、
お兄ちゃんは貸したくないから無視して遊び続け
ます。

弟はそれを見て、「貸して!」と泣きわめきます。
そうした場合、親は、ついお兄ちゃんに「貸して
あげたらいいじゃない。あなたはお兄ちゃんなん
だから、がまんしなさい!」と言いがちです。

親としてはお兄ちゃんに、弟への思いやりを求め
てそう言ってしまうのかもしれませんが、
実は違うんですね。

弟を早く泣き止ませたくて、お兄ちゃんにがまん
させていることにほかなりません。

冷静に考えれば、そもそもおもちゃはお兄ちゃん
のものですから、弟に「がまんしようね」と言う
のが筋です。

実は、親もそれはわかっている。でも、弟はまだ
幼くて、諭そうとしてもよく理解できないから、

話がわかるお兄ちゃんにがまんをさせようとして
しまうのでしょう。

しかし、それでは「人を思いやる心」は育たない
と思います。

それどますIころか、お兄ちゃんの心は不満で
ふくれあがり、弟にやさしくできなくなってしまう。

弟にしても、「泣けば何でも自分の思い通りにな
る」と味をしめ、人の気持ちを推し量ったり気遣
うことができなくなるのではないでしょうか。

そこで、親としては
まず弟に、「泣いてもダメよ。お兄ちゃんに
『貸して』とお願いしなさい」
と言い聞かせる。

あるいは、「お兄ちゃん、◯◯君(弟)が泣いてる
よ。どうしようか?」
と聞いてみてもいいかもしれません。

するとお兄ちゃんは、「しょうがないなあ」と渋々
ながらも、弟におもちゃを渡すかもしれません。

「自分は悪くない」ということを親が理解してくれ
て安心したからこそ、まだ幼くて我慢がきかない弟
を思いやって、譲る気持ちが生まれるだと思います。

弟も、ここで泣いたって、わがままは通らない、
ということや、

自分の望みを聞いてもらうはどうしたらいいかとい
うことを学びます。

そして、おもちゃを貸してくれたお兄ちゃんの
やさしさにふれ、人を思いやる、譲るということを
知るのではないでしょうか。

親は気長に、「経験させる」

もちろん、また同じようなケンカをするでしょう。

でも、人は衝突によってコミュニケーションの
仕方を少しずつ学んでいくものです。

親はそれに根気よくつき合って、「人を思いやる」
とはどういうことなのか、

思いやることの大切さ、人からの思いやりの
ありがたさを子どもたちに経験させ、実感させて
あげましょう。

少し時間はかかるかもしれませんが、

「人を思いやる心」は確実に育っていくはずです。


バディスポーツ幼児園
理事長 菊 池  剛